Japanese Association for Acute Medicine
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日本救急医学会Sepsis Registry特別委員会の研究が最優秀論文賞(JIC Award 2014)を受賞しました

本会は学術団体であり、救急医学/医療の分野への貢献をその目的に据えています。日本救急医学会Sepsis Registry特別委員会は委員会活動の一環として、Surviving Sepsis Campaign(SSC)に準拠したJAAM SRデータベースを開発し、severe sepsis、septic shockに対する前向き観察研究を実施しました。

研究成果は、JAAM SR study groupとして日本感染症学会/日本化学療法学会が発行するJournal of Infection and Chemotherapyに平成26年2月に掲載発表(J Infect Chemother 2014; 20(2): 115-20)されました。この度、この論文が最優秀論文賞(JIC Award 2014)を受賞いたしました。この受賞は、日本救急医学会が行った敗血症研究が、感染症領域の専門学会にも評価された結果です。Sepsis Registry特別委員会ならびに研究参加施設の各位のご尽力に敬意を表すとともに、この栄誉を会員各位と分かちたいと思います。

さて、この研究では特別委員会施設だけでなく救急科専門医指定施設からも参加を募り、全国39施設で1年7か月間に登録された1,104 例が対象です。解析の結果、わが国の敗血症診療の水準が欧米諸国に引けを取らないこと、わが国においてもSSCに基づく治療が有用であることを確認できました。
大変興味あるのは、今回の対象ではsevere sepsis bundle の順守率が低かった(=コンプライアンスが悪かった)にも関わらず、治療結果が引けを取らなかった点にあります。この事実の解釈は分かれるところですが、以下のようなコメントも可能でしょう。

ドレイファスという哲学者が、戦闘機パイロット(通称トップ・ガン)の教官を対象とした調査を実施しました。教官たちは、緊急時(例えば、エンジン停止、対空ミサイルの追尾等々)の対処マニュアルを作成し、これをトップ・ガンに教えます。その教官たちが同様な緊急時で、どのように対処しているかその実際をドレイファは調査しました。教官は、自分たちがまとめた標準的対応としてのマニュアルとは異なる対応をしていることが判明しました。マニュアルを基準にすれば、コンプライアンスが悪いということですが、緊急時の対応には支障がありませんでした。ドレイファスは、教官が状況に応じて適宜の判断を下し、対応している結果と評価しています。今回のSepsis Registry特別委員会の結果は、もとよりsevere sepsis bundleの価値を下げるものでもないし、またコンプライアンスが悪いことが日本の救急医の評価を下げるものでもありません。治療成績と合わせて考えるなら、状況に応じた適宜の判断の反映と理解すべきではないでしょうか。表現を変えれば、現実の多様性を表しているということになるでしょう。

レジストリという観察研究は医療現場の実際を浮かび上がらせ、そこでの治療内容の評価する力を持っていることを示す論文でもあると思います。

なお、抄録は以下の通りです。

To elucidate the standard Surviving Sepsis Campaign (SSC) guidelines-based quality of care and mortality related to severe sepsis in Japan, we conducted a multicenter, prospective, observational study using a new web-based database between June 1, 2010, and December 31, 2011. A total of 1104 patients with severe sepsis were enrolled from 39 Japanese emergency and critical care centers. All-cause hospital mortality was 29.3% in patients with severe sepsis and 40.7% in patients with septic shock. Pulmonary, renal, hepatic, and hematological dysfunctions were associated with significantly higher mortality, and hematological dysfunction, especially coagulopathy, was associated with the highest odds ratio for mortality. Compliance with severe sepsis bundles in our study was generally low compared with that in a previous international sepsis registry study, and glycemic control was associated with lowest odds ratio for mortality. Despite higher complication rates of multiple organ dysfunction syndrome and low compliance with severe sepsis bundles on the whole, mortality in our study was similar to that in the international sepsis registry study. From these results, we concluded that our prospective multicenter study was successful in evaluating SSC guidelines-based standard quality of care and mortality related to severe sepsis in Japan. Although mortality in Japan was equivalent to that reported worldwide in the above-mentioned international sepsis registry study, compliance with severe sepsis bundles was low. Thus, there is scope for improvement in the initial treatment of severe sepsis and septic shock in Japanese emergency and critical care centers.

本文は、
http://www.jiac-j.com/article/S1341-321X(13)00022-6/abstract?cc=y
に掲載されています。

(文責:行岡哲男)

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